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シリーズ「ハッカーと仕事」第4回~情報セキュリティを天職とするには

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文:斉藤 健一(日本ハッカー協会 監事)

当協会の理事を務める上野宣氏を、セキュリティ業界の有名人と呼ぶことに異を挟む人は少ないはずだ。2006年、セキュリティを専門とするトライコーダを設立し、セキュリティ教育・トレーニングと脆弱性診断・ペネトレーションテストを中心に事業を展開する。

さらに、情報セキュリティ専門誌 ScanNetSecurity編集長、OWASP Japan代表、一般財団法人セキュリティ・キャンプ協議会GMなど、いくつもの肩書きを持ち、さまざまな組織で勢力的に活動を続けている。

今回のインタビューでは上野氏の仕事観について伺った。前半は自身の経歴について、後半はセキュリティ業界を目指したり、ステップアップしたりしたい若い世代へのメッセージとなっている。

●ハッカーズ・インターネット・山口英教授

まずは、上野氏の経歴を簡単に紹介しよう。父君がPCショップ(店名はハッカーズ)を営んでいたことから、自身も幼いころからPCに触れ、自然とプログラミングを行うようになっていたという。

進学では、ロボコンへの憧れから府大高専(大阪府立大学工業高等専門学校)を志望し、その後は、豊橋技術科学大学を経て、奈良先端科学技術大学院大学へと進む。情報セキュリティに関心を持ったのは大学生時代、インターネットのアンダーグラウンドからハッキング技術の情報などに触れたのがきっかけだった。

大学院では山口英研究室に在籍する。山口英氏は、インターネット黎明期から情報セキュリティを研究し、指導的役割を担ってきた人物で、初代の内閣官房情報セキュリティ補佐官も務めた。

残念なことに、2016年、52歳という若さで逝去されるが、山口氏を偲ぶ声は今も止むことがない。上野氏も大きな影響を受けたといい、「自分の能力を社会のために還元する」という恩師の教えを今も実践している。

●天職の就き方

大学院修了後、知人の誘いもあり、上野氏はベンチャーに参加する。

特に情報セキュリティを専門とした会社ではなかった。当時の上野氏にとって情報セキュリティはあくまでも趣味という位置づけだった。

好きなセキュリティを仕事にしようと考えたのはそれから数年後のことだが、既存のセキュリティ企業では、職種が限られてしまう。それならいっそのこと起業しようと設立したのがトライコーダだ。

ちなみに、トライコーダとは、スタートレック・シリーズに登場する多目的・高機能な携帯分析装置で、まさに未来を体現する夢の技術だ。大のスタートレックファンでもある上野氏が、情報セキュリティの分野でマルチに活躍したいと考え社名に冠したのも納得できる。

話を戻そう。上野氏は起業の際に、「徹夜」「飛び込み営業」などあえて「やりたくないことリスト」を作ったという。また、起業してからは「正社員を採用しない」、「取引先1社あたりの売り上げは全体の4分の1まで」といった事柄を自身に課したという。起業から15年経過した現在でもこれらの事柄は守られているという。

上野氏がある勉強会で発表したプレゼンテーションに「天職の就き方」がある

この中では「好きなこと」、「お金になること」、「できること」、この3つの要素が重なる補集合の部分が「天職」だと位置づけられている。

他方、好きで、できることだが、お金にならないことは「趣味」であり、できることで、お金にもなるが、好きでなければ、それは単なる「労働」となってしまう。そして、天職への道は上野氏が起業し、歩んできた道そのものでもある。

ここで、「できること」に関して興味深いエピソードがある。それは、とある知人の「上野君は難しいことを平易に人に教えるのがうまい」という言葉だ。

自身が考えている自分と、他者が評価する自分との間には違いがあると気づかされた経験だったといい、トライコーダの事業の1つに教育を取り入れるきっかけにもなったそうだ。

今後の事業目標について質問すると、一人会社なので売り上げは自分の働きに応じたものにならざるを得ないが、それを底上げすべく教育コンテンツのライセンス化に着手したという。

●セキュリティ業界を目指す若い世代へのメッセージ

上野氏が考えるセキュリティとは「正義の味方」そのものだという。

社会には仕事のやりがいに悩む人もいるが、セキュリティとは組織や個人、そしてデータを守る仕事であり、人から必要とされているという実感も持てる。まだまだ人材も不足しているし、後からお金も付いてくる。こんなに良い仕事は他にはないとまで断言する。

また、当協会に登録するような人であれば、脆弱性診断が向いているのではないかと上野氏は考察する。

いわゆるハッキングをイメージする仕事だが、依頼が多い割には人材が少ない。

現在、さまざまな企業が求人を出しており門戸は広い。さらにリモートから実施することが多く、コロナ禍でも対応できるのが特徴だ。

最後に、セキュリティについてどのように勉強したらよいか尋ねたところ、勉強自体は好きなところから始めるのがよいと思うが、セキュリティの分野は求められる知識量が多く、新たなものも次々と出てくるので、自分で勉強を進めなくてはならない。

この勉強や情報収集が苦になると、つらい仕事となってしまう。その意味から「好き」という気持ちは大切であり、モチベーションへとつながる。

さらに研鑽を重ねて、先述の「できること」を大きくしていけば、天職に就ける確率はさらに高まるはずだとも答えてくれた。

上野氏自身、セキュリティが好きで天職だと考えているだけに、その言葉に迷いは感じられない。これを読んでいる方の中にセキュリティが好きな方がいらっしゃれば、ぜひ新たな一歩を踏み出してみてほしい。

天職の就き方

 

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